
これが、防波堤となっているその船の舳先である。
その名を武智丸という。二隻あるので第一武智丸と第二武智丸である。
沖側(写真)が第二武智丸となっている。

で、防波堤となっている廃船という存在そのものも珍しいものとは思うのだが、それ以上にこの船(防波堤)が貴重なものであるという理由は別にある。
ちなみにこの船が建造されたのは昭和19年5月。
日本は負け戦の真っ只中である。南方への輸送のため船はいくらあっても足りないくらいだ。
しかし、船をどんどん作ろうにも資源のない日本では鋼材が足りない。
で、考えられたのが「コンクリート」で船を作ろうというものだった。

▲船の甲板であった部分の写真である。
ちなみにコンクリートで船を作ろうという発想は、特段珍しいものではなく、鉄筋コンクリートの黎明期には、
その特性を生かすものとしてコンクリート製のボートが作られている。
(子供のころ持っていた学研「発明・発見のひみつ」に載っていたからたぶん間違いない。)
第一次世界大戦でも多く作られたという。

▲内部構造(意外にシンプルだけど…)
でも、平時にはどう考えても燃費が悪そうなのでやっぱり使われなかった。
こういった船は、戦時以外には(たぶん戦時にも)役に立つとはいえなかったものと思う。
